Who sings a gloria?

東芝からも再発盤が出ましたね。
とりあえず取り置きだけはしときましたが、まだ買ってない(笑)。ROCK YOU JAPAN!という、邦バンドの復刻シリーズの一部なのですが、シリーズ共通の緑色の帯付き。帯のキャッチフレーズは、86年の初出時のままのようです。
裏ジャケットは、オリジナル盤と同じ黒猫の写真(オフィ盤は、メンバーの集合写真)で、曲の記載もALLカタカナ。発売当時のものを、そのまま復刻したんでしょうかね。ボーナストラックもなし。
CD店の店頭で、手ごろな価格(¥2,000)で買えるのは魅力ですが、やっぱり多少なりとも彼らに興味があるのなら、少々高め(¥3,150)+送料かかる+ネット通販の手間ひま、というハンディはあれど、ボーナストラック2曲にJUN先生のライナー&当時の裏話も満載の、ディレクター加茂さんとの対談つきの、オフィ盤買ったほうが…って、オフィ盤知らぬまに完売かyo! これでまた、オフィ盤がオークションでプレミア化するのかしらん。



Who Sings A Gloria?

Who Sings A Gloria?

というわけで、86年発表のメジャー1stアルバム。
『GOOD EVENING〜』のゴリゴリ感や、若干のアングラ臭と比べると、格段に音が整理され、きらびやかに、キャッチーになってて、まあぶっちゃけ非常に金のかかってる臭がぷんぷんと(笑)。
それがさぞかし、当時のインディー至上主義者たちの神経を逆撫でしたことは想像に難くないのですが、でも、オフィ盤に載ってるJUN先生のライナーとか、DOLL8月号のインタビューなんかを読むと、どうもそれこそが望むところ、だったみたい。

『契約時最初に思ったのは、いかにして当時の〝インディーズ〟などといううつろなくくりから抜け出せるか?ってことだったね。結局この命題の解決には時間こそ必要だったんだが、当時は一刻も早く縁を切りたくていろいろ考えたよ』(オフィ盤ライナー)
『自分でコントロールできると思ってメジャーに行ったんだよね。自分たちの音楽がマイノリティで自分たちだけわかればいいで終わろうとは思ってなかったから』(DOLL8月号)


何となく見えてくる。
なんていうのかな、すごくマスの世界に向けて何かを仕掛けていく、という意識が強かったのかな、当時のJUN氏には。
メジャーという巨大な仕組みの、外側から竹槍1本で突っ込んでくんじゃなくて、内側に入り込んで小型の時限爆弾仕掛ける、みたいな。ただ、そのメジャーの仕組みってのは彼の想像よりもずうっと強固で歯が立たなくて、目論見どおりにはなかなかいかなかった。綺麗事じゃすまないって痛感した、と当時発言してたみたいですね。でまあ、そのへんの鬱屈や敗北感、みたいなのが次のシルバーガンズあたりだと顕著に出ちゃってると思うんですが、じゃあこのグロリアはどうか。
すごく推進力のある、そしてヘンな言い方なんだけど〝希望〟に満ちたアルバムだと思う。それこそ、『カトラスを片手に、六分儀と羅針盤と風をたのみに、嵐の外洋へと船を進めたところ』なわけで、困難が立ちはだかることも承知の上で、むしろそれすらもが楽しみっていうような高揚感。まだ見ぬ未知の世界に対する、好奇心と期待感。
そういうのが全編にみなぎってて、ちゃちな言い方でアレなんですが、聴いてて元気が出てくるのですね。
キャッチーでやかましくて颯爽としてて、よけいなものいっさいなし。顔を上げて胸を張って肩で風切って進む、みたいな。で、ライヴ映えする曲がそろってる。今もライヴでけっこうやってる曲が多いよね。
テンション上がらんときには、バッサン〜TRICK STAR〜スカーレットの3連コンボでかなり復活します。ドーピングかいな。




このアルバムが、世間的には不発扱いを受けている理由が、もしメジャーに媚を売った軟弱な音作りになっちゃったから、みたいなところにあるんだったら、それは思いっきり誤解だと思うんだけどな。
もし当時、こらあかんWILLARD日和ったわ、なんて思って聴くのやめちゃった、なんて人がいるんであれば、今聴いたらけっこう印象変わるんじゃないかという気がするんですが。
うーん、やっぱり5年早かったな、このアルバムは。よいわるいは置いといて、デビューがあと5年遅ければ、もう少し楽に活動できたのかもしれないのに、とは思う。いや、ZI:KILLみたいになってた可能性もデカいが(苦笑)。レコード会社、同じ東芝EMIだし。
結局、JUN先生が当初目指した、それこそTRICK STAR的なあり方っていうのは、X(というかYOSHIKI御大)が登場するのを待たなきゃいけなかったのかな、と。(これはWILLARDファンからすると、不本意な比較対象かもしれませんが)




オフィ盤には〝PUNX SING A GLORIA〟に〝OUTLAW〟という、初期の問答無用の大名曲がボーナストラックとして収録。
この2曲のために、あやうくプレミア付いて¥9,800の『GONE WITH THE WIND』に手を出すところだったので(笑)、感謝感謝(いやもちろん、そっちはそっちで再発して欲しいけど)。
〝OUTLAW〟は、もっと重くてゴシックな曲なのかと勝手に想像してたんだけど、違った。ゴシック色というのは確かにWILLARDにはあるけれども、でもメロディは絶対に一発で鼻歌かませるくらいにわかりやすくてポップで、そこらへんがこの人たちの、1番パンクな部分じゃないかと思う。パンクって、誰もが歌えてナンボだって私は思ってるので。