The Legend Of Silver Guns

『MY SWEET JOURNEY』発売前に、DOORSというチョイ悪親父向け男性誌で、JUN先生が原稿書いてたんですが、なかなか興味深いこと書いてたっけ、そういえば。
手元に現物がないので、正確な引用ができないんですが、メジャーにいって、まあそこそこの売上も出して、大きなCMタイアップの話も決まってたんだけど、自分の理想が100%実現できずに70%くらいで妥協しなきゃいけない状況に、1年で耐え切れなくなってしまった…みたいな内容。
すっかり笑い話にしてましたけど、そういやこのアルバムを作ったころってのが、ちょうどそんなバタバタな時期にあたるんじゃなかったか。



The Legend Of Silver Guns

The Legend Of Silver Guns

※リンクは9月発売の東芝盤。私が持ってるのは、6月に再発されたFlying Ace盤。



まあね、87年だからね。
まだロックバンドに対する効果的なプロモーションの方法が確立されておらず、それまでの芸能界的なやり方を、無理やりバンドに当てはめて売り出す、そういうケースが多かったんだと思う。
BUCK-TICK兄さんたちだって、このころは全国各地のプロモーションイベントにあほのように駆り出されて、心ならずもファンのお嬢ちゃんたちとポッキーゲーム*1とかやらされる破目になってたんだから。フルメイクで髪立てて。
もしもJUN先生が、この時期を上手く乗り越えてたら、ひょっとしたらバンドブームのころのBUCK-TICKくらいのセールスとか動員とかは、叩き出せてたのかしら。いや、東京ドームは絶対無理だったろうにしても(笑)、武道館とかくらいは。
(世代的にはBUCK-TICKとWILLARDって、そんなに大きくは変わらないんですが、やっぱりバンドブームに乗っかれたか外したかで、世代が一回り違うような印象が出来ちゃうんだよなあ)
TRICK STAR〟なんて曲歌ってるくせに、意外とそれに徹することができずにちゃぶ台ひっくり返してぶち壊してしまうあたりが、結局JUN先生のしたたかさの欠如というか、『スター』になりきれないツラの皮の薄さなんだろうけど。でもそこがいい(笑)。
(で、だからといってBUCK-TICK兄さんたちが、ツラの皮が厚いのかといえば別にそんなことはないんですが。あれは、櫻井敦司の魔性のルックスに負う部分がかなりデカい。で、彼の場合はルックスの派手さに見合わない暗くて地味な性格が、数々の悲喜劇をひきおこしてしまっているのだと私は邪推してますが。閑話休題



そんな時期に作られた作品だからか、詞の印象が、何だかびっくりするほど閉塞的なこのアルバム。
“Nervous Red Friday”とかタイトルからしてモロだし、

ここからは出られない
出口は今も見えない
君は周りを囲まれて 夢に押しつぶされるのさ
ここから出るには 何をすればいい

こんなんばっかり。鬱屈したフレーズのオンパレード。
ラストの〝Return In Triumph〟は、

燃え落ちる前に Hurry up Hurry up 戻ってくるのさ
片づけることが Too much Too much あまりに多すぎて

で、

ここにいた時間が長すぎたけど
ここを焼き払い 船に戻るさ

だからなあ。
〝長すぎるほどいた〟ここってのが=メジャーで、それを焼き払って戻る船が=インディー、と歌ってるようにも聴こえる。ま要は、歌の名を借りて、やってられっか! と悪態ついてるだけというか(笑)。




音の方はといえば、すごくアイディア豊富でいろんなパターンの曲が入ってて、よく言えばヴァラエティにも富んでて悪く言えば散漫。
アレンジはどれもこれも、ものすごくカッチリと、細部まで構築されている。(かといって、よく練られている感じかというとそうでもないんだこれが)
もちろん、メロディとかはポップなんだけど、同時にパラノイアック。
〝Silly Games〟なんて、こんなに目まぐるしくコロコロ展開変わる曲、よくシングルにしたなあと思う。確かに、派手でカッコいい曲だけどさ。




1番最初に聴いたときは、職場であまりデカい音が出せなかったせいもあって、全然ピンとこなくて正直ちょっとあせった(苦笑)。
何度か聴きこんでるうちに、ジワジワと効いてきた感じ。今では、とても好きなアルバムです。
最近のお気に入りは、〝Waiting For My Phantom Jellemy〟。ファニーですっとぼけてて、ちょっとマザー・グースの童謡を連想させるメロディで、ビートルズのホワイト・アルバムに入ってそうな曲。ポール作曲でね。これは、かなり鼻歌登場率高し(笑)。
〝Nervous Red Friday〟はもちろん名曲だし、〝Fairy Tale〟も大好き。ファンタスティックなのに、ちょっと病んだ感じが。




そういえば、ブックレットで、ジャケットの元ネタはフィーリーズ、と種明かしされてたけど、これのことですね。

Crazy Rhythms

Crazy Rhythms

おかげで、すごい今聴いてみたくて仕方がないんですが、今はもう廃盤くさいですね。また中古屋で地道に探すしか…

*1:ポッキーを口にくわえて輪ゴムを受け渡していくという、アレです