MUSICAつれづれ

それにしても、この表紙はつくづくとあんまりだ。



はじめに言っとくと、ワタクシは鹿野淳氏があまり好きではない。“嫌い”というほど強い負の感情ではないにしろ、なんつーか、いけ好かない。彼の書く文章や、出演しているテレビとかラジオは、できれば視界に入れずに済むにこしたことはないと思っている(笑)。
理由は大変に明快である。彼はROCKIN' ON JAPAN編集長時代、1度もBUCK-TICKを誌面で取り上げてくれなかったからだ*1(大真面目)。ああそうさ、言いがかり以外の何者でもないさ。市川哲史氏がロキノンを退社して、第1次山崎体制になってから、まるで市川氏へのあてつけのようにXもBUCK-TICKもその他のお化粧しているバンドたち(ちなみに当時はまだヴィジュアル系という言葉はなかった。黒服系とか、美学系とか言ってた)も、見事に誌面から姿を消してしまっていたから、鹿野が編集長になったときにはうっかりちょっとだけ期待してしまったんだよ。なんだよてめー昔は市川の後ろにくっついてってBUCK-TICKインタビューやったり、酒呑み日記の現場にもいたりしてさんざんいじられてたくせにー。あーそうかいそうかいありゃあお仕事にすぎなかったのかい。BUCK-TICKのことなんか、あんた結局好きでもなんでもなかったのかい。あの雑誌に関わってた人間で、XやBUCK-TICKを真っ当なロックバンドとして取り上げてくれたのは、市川だけだったっちゅーことかい。そのくせラ○クは載せるんだからわけわかんねー。って、なんかこんなこと書いてると、かえってイタタなロキノン信者丸出しだね私(失笑)。うん、95年くらいまではもーんのすごく熱心に読んでた。ロキノン本誌もJAPANも毎月買ってた(遠い目)。渋谷陽一氏の著作はおろか、渋松対談の単行本まで持ってるぜベイベー。タナソウタナソウと名づけたのは、山崎氏だっけそれとも増井修氏だったっけ。
…ものすごく脱線した。そんなこんなで、『MUSICA』は創刊以来ほぼスルーで通してきたわけだが、しかしThe Birthday表紙巻頭しかも写真は件の多摩川バーベキュー、なんつったらアナタ、手に取らないわけにはいかないじゃないか。というわけで買ってきました。ああ長い前フリだった。



結論から言うと、かなり読み応えのある特集だった。くそう! 敗北感!(笑)
読みながら、いろーんなこと考えてた。考えてたんだけど、でもあのすんごく楽しそうなカチューシャチバの笑顔と、ピックくわえてるハルキと、4人の集合写真と、あとチバの「死ねーーーっ!!」で(笑)、わりともうどうでもよくなった。って、それ鹿野あんまりえらくないじゃんカメラマン若木さんがえらいんじゃん(笑)。
ああメンバーみんな、このバンドのこと愛してんだなあとしみじみ思う。で、こっちまでなんか嬉しくなる。ほら、自分が好きなものをさ、好きな人が好きって言ってくれたら嬉しいじゃないですか。あー私もバースデイ好きだよ、君らも好きなんだそっかー気ィ合うね! そんな感じ(笑)。私が今まで、ズブズブと頭の先からつま先までめり込むくらいに好きになっちゃったバンドってのは、思えばみんなそうだった。メンバーが、まず誰よりも自分らのバンドのファンで、参っちゃってて、このうえなく大事にしている。なに、バースデイもひょっとしたらそうなのかな? そういうのが、あのピーカンの青空の下4人が横一列に並んで、全員で肩こそ組んでないけど*2そんな感じにくっついて写ってる集合写真1枚で、ちゃーんとこっちに伝わってきた。もうそれだけで私は幸せだ。うん、あほだねえ(笑)。
それこそ鹿野氏が、私が感じたその通りの気持ちをインタビュー中に代弁してくれちゃったりしやがりましたので、ムカツクんだけど引用(笑)。「俺はこの生き物そのものの音楽のファンなので、ふたりでそういう話をしてるとけっこう涙が出るくらい嬉しいわけ。」 って、あーもうね! ホントそうだわ! 腹立つわ!(笑) チバとキュウちゃんみたいな男同士の、なんつーの、き、絆?(笑) たぶんなににも替えがたい親友同士、なんだろうけど全然ベタベタしてなくって、親友っつーより腐れ縁、みたいな。いいな、素敵だな。お互いチバちゃんキュウちゃん呼ばわりしてんのがまた可愛いっつーか。BUCK-TICK櫻井&今井が、最近お互いを「櫻井さん」「今井さん」呼ばわりしてるのと同種の、愛情(と誤解を恐れずあえて言うぜ)と照れが入り混じったものが、感じられるわけでありますよ。




前から気になってたことと、リンクするようなチバの発言がインタビュー中にあったので、それについて。“KAMINARI TODAY”は、ロッソでもミッシェルでもできない、このメンバーだからできた、みたいな。この曲についての音人9月号のインタビューで、「人は無垢なまんまじゃいられないけど、そこで止まってるのがいいこととは思わない、その先に行きたいじゃんか」ってなことをチバ言ってて、あらーなんかこれどっかで聞いたことあるわ、と思ってたのです。うん、あれよ、あれ。“エレクトリック・サーカス”。


『澄み切った色の その先に行く』


“その先に行く”って、歌ってるんだよなああの時点ですでに。「澄み切った色」というのが、ようするにその「人が無垢なままでいられた幸福な時代」を象徴する言葉だと解釈すれば、“エレクトリック・サーカス”と“KAMINARI TODAY”の、根っこはおんなじなんだと思う。でも前者は、先がないなんて最初っからわかってたよ、なんつーどうにもこうにもハナから終わっちゃってる唄で、後者は神様おいてけぼって、アクマと仲良くなって、カミナリ鳴らすぜおら行くぞ、ってなんかこう省略しちゃうと本気でアホだな(笑)、まあそういう唄。ベクトルがまるで逆だ。
“その先に行く”というテーマを、ミッシェルが終わるからああ歌ったのか、それともああいう風に歌わざるをえなかったからミッシェルは解散したのか、卵とニワトリでどっちがどうだとかはもうわかんないし、考えても無駄なことだからそれはどーでもいい。ただ、ひとつのバンドの終わり…というのは、人が死ぬことととても似ていると私は思ってるんだけど、その、死の悲しみや喪失感を乗り越えたうえで、今のチバは「その先に行こうぜ」と胸張って呼びかけられるようになった。それに足る仲間を、彼は再び得ることができた。そういうドラマが透けて見えるから、みんな“KAMINARI TODAY”に単なるいい曲、という以上の感情をどうしても抱いてしまうんだろうし、編集者たちもこぞってこの曲のことばっかり(笑)聞いてくるんだろう。もちろん、そういう背景を知らない人たちだって、この曲聴いた人たちの中にはいっぱいいるはずで、でもそういう人たちにだってちゃんとこの曲は響くと思う。この一連のドラマは、チバ個人のものから、ヒトの一生の中で誰にでも起こりうる普遍的なものとして昇華されてるから。
ちょっとそれるけど、バースデイが武道館やる、というのを知ったときに、私がとっさに思ったのが、「おお、チバ本気で天下とりに行く気だ」ということ。って、そんなアナタ族の集会じゃないんですからとセルフつっこみ。うん、1度頂点を極めたあのバンドが見せてくれた景色に匹敵する、あるいはひょっとしたらそれ以上の眺めを、私たちに見せてやるよと。The Birthdayはそれだけのバンドなんだぜ、と。その証明のために、ミッシェルではやらなかった武道館を、あえてやろうと決めたのかな、と。いや、例によって、あまり深く考えないでいいよいいよっつっただけかもしれんが(笑)、でもカミナリを鳴らしに行くって、そういうことと違うのかなあ。ちっちゃいコップの中の嵐みたいなシーンでちまちま好きな音楽鳴らしてるだけじゃなくって、もっとマスな、不特定多数の大衆相手に、このバンドで殴りこみかけてやるぜっていう。




どうでもいいが、この号タワレコで買って、職場で読んで、で帰るときにタワーの袋からスカパラのコットン製エコバッグに入れ替えたわけだ。そしたら帰り道に、豪雨に降られたわけだ。傘持ってなかったわけだ。そりゃあもうものすごい勢いで濡れネズミですよ、雑誌もろとも。おかげで、ただでさえ大変なことになってる表紙が、さらに見るに耐えぬ惨状を極めているのでありますが、これはやっぱり買いなおさざるをえないのだろうか。本文の紙が、水含んで全部波打っちゃってるんですが(泣)。ええい今月はGiGSも表紙巻頭なんだから、雑誌予算にこれ以上余分な枠はないんだっつうの!

*1:なので、今後MUSICA誌面にBUCK-TICKが載るようなことがあれば、あっさり手のひらを返すことに何のためらいもない。

*2:ていうか、チバさんはほんとにイマイさんのことが好きだねえ笑。