9mm Parabellum Bullet/Termination

むかしむかしそのむかし、わたしはたいそうなアニメ好きの少女でございました。
ウチの親に言わせると、齢2歳にして当時放映中だった『勇者ライディーン』を、目をランランと輝かせテレビにかぶりついて見るような、そんな幼少期をすごしておりました。同年代女子が夢中になっていた『キャンディ・キャンディ』だの魔女っ子シリーズだのには目もくれず、ガッチャマンだのコンバトラーVだの、『デンジマン』『バトルフィーバーJ』なんかの東映戦隊モノだのを愛好し、毎週欠かさずもろもろの番組チェックにはげみ、父親を悪役に見立てて正義の味方ごっこをして遊ぶような、そんな子どもだったようなのです。男兄弟いないのにね。
振り返ってみると、私の音楽的原体験というのはどうもこのへんの、ロボットアニメだのヒーロー特撮モノだのの主題歌にあるような気がいたしますです。その手のテーマソングが、ごちゃまぜに収録されたカセットテープというのを昔1本だけ持っておりましてね。たぶん親にねだって買ってもらったんだと思います、いつごろかは忘れたけど。小学校の高学年ぐらいになるまで、それこそ最終的にはテープがデッキにからまってオシャカになるまで(笑)聴きたおしていた記憶があります。何が入ってたっけなあ、鋼鉄ジーグとかグレートマジンガーとか、宇宙鉄人キョーダインとか(笑)。だ、だ、だだだだダダせいのー、ちきゅーうせいばつロボットぐん♪ UFOロボグレンダイザーとか、あらすじは綺麗に忘れているのにおかげさまで主題歌だけは、いまだにフルコーラス歌えるぜ。ちーきゅうーはーこんーなにーちいさいけーれーどー♪ 
だから、そんな幼少期をすごした私が、長じてヴィジュアル系と呼ばれる一連のバンドどもにうつつを抜かすようになったのは、ある意味とても自然なことだと思うのです(笑)。だーってさー、あれじゃん、そういうロボットアニメなんかの登場人物が、そのまま抜け出してきて楽器もってアニメの主題歌やってるようなもんじゃんヴィジュアル系って(笑)。基本的にソロアーティストにはあまり惹かれず、バンドばっかり好きになるってのも、おそらくそのへんが影響してる。集団ヒーローものが好きだったから、サイボーグ009とか*1。特撮だったら、断然東映の戦隊モノで、宇宙刑事シリーズとかはほとんど見てなかったなあ*2。なんかね、出自も性格もバラバラの複数の人間がグループを形成して、反発したり友情を深め合ったりしながらひとつの大きな目的に向かってゆく、という構図が好きらしいですね(笑)。バンドもそうじゃん。いや、そうであって欲しいというか(笑)。



…でだ、何を言いたかったのかというとだ、9mmの曲っちゅーのはそういう、モノゴコロついたころから自分が好きだった、音楽的な原風景ともいえるような『ヒーローアニメのテーマソング』を、なんだかものすごく彷彿とさせるのだ。今の、タイアップの仕組みが完璧に確立されてるところに乗っかってる“アニソン”じゃあないよ(笑)。わっかりやすいマイナーメロディとか、終始疾走しまくり、押しも引きもクソもなくテンパリまくりのサウンドとか。LUNA SEAの“ROSIER”なんか、ほんとPVからしてヒーロー系アニソンの最たるものだと思うんだけど(断言)、あの曲のやたらめったらなテンションの高さと、そこから得られる興奮・高揚感それと一抹のこっ恥ずかしさ(笑)、そういうものと同じにおいを、ワタクシ9mmの曲からは非常に感じるのです。あと歌詞ね。理想と現実のギャップに翻弄されて嘆いたり皮肉っぽくなったりやけっぱちになったり、それでも最後のところでギリギリ踏みとどまって、かすかな希望を信じて生きていこうとする、そういうの少年から青年になりかけの年ごろならではの心の襞みたいなのが、言葉自体は簡潔なのに、とても文学的な比喩表現で描かれていて、私はとても好きなのですが。でもなんかさ、そういうのもちょっとアニメのヒーローちっくじゃない?(笑) 周囲の無理解に苦悩しながらも、地球の平和を守るためにひとり戦う、“キャシャーンがやらねば誰がやる!”っていうか(笑)。
なんかこんなこと書いてると茶化してるみたいだけど(苦笑)、そんなことないよ。こういうわかりやすさ、泥臭さ、実は心の奥底では好きなんだけど素直に好きって言いづらいこっ恥ずかしさ、そういうのに対して今の若手バンドって、あんまり正面から向き合ってくれないじゃないですか。でも9mmは、いやでもみんなこういうの嫌いじゃないじゃん? いいじゃん好きならっつーか俺ら好きだし、というのを、それこそ真っ向勝負で、全力でやりきってると思うのです。bridgeの最新号で、吉井和哉が今1番好きな若手として9mmの名前挙げてましたけど、たぶんその泥臭さに真剣に向き合う姿勢にロビンはピンときたんじゃないのかなあだってロビンがそもそもそういうアーティストだから。でもって、タナソウがMUSICAのレビューで「ぶっちゃけX JAPAN思い出した」っつってんのも、そこらへんじゃないかね(笑)。ヤツは好かんが、こればっかりは完全に同意する(失笑)(もっともヤツは、否定的なニュアンスとしてXの名前を挙げているのが何となく文章から伺えるのであるが)。“Discommunication”がオリコンチャート9位にチャートインしたっつーのを聞いたとき、私はしみじみ思いましたね。ああ、こういうの聴きたいと思ってた人けっこう多いんだな、と。



ただ、泥臭さをそのまんま、泥くさーく湿っぽーくサウンドにしちゃってるバンドだったら、たいして面白くなかっただろうな。いろんな音楽ジャンルから、ちょっとずつおいしい要素をひっぱってきては、そのすべてが等価でもってひとつの曲の中に無造作にぶち込まれてるあたりは、やっぱりすごく今どきなバンドですね。そのへんの混ぜ方がとても上手い。それと、メロディは泣き泣きなのに楽器の音は乾いてる。で、音がダンゴになってない。それぞれのフレーズがシャキっと立ってて、ぐちゃぐちゃに混ざるんじゃなくって絡み合ってる。
“SLEEPWALK”が非常にお気に入りなのですが、この曲はほんと面白い。5拍子の変則リズムに、まるっきり違和感なくメロディと日本語が乗っかってる。滝さんやるなあ。


Termination(期間限定盤)

Termination(期間限定盤)


強いていえば、中盤でややだれる。40分にも満たない尺で、だれるというのはどういうことかとも思うのだが(失笑)、アタマっからケツまでテンションが振り切れたまんまで一定しちゃってるから、そう聴こえてしまうのではないかと。ただ、1stアルバムからそんな押し引きのツボを心得た、熟練のベテランバンドみたいな真似されても困っちゃうので(笑)、これでいいんだと思います。で、そういう風に、こここうしたらもっとよくなるんじゃないの、と思わせてくれるとこまで含めて、最高の『1stアルバム』。個人的には、これからメジャーコードの曲を聴いてみたい。単に私が、メジャーコードが好きだからなんだけど(笑)。マイナーコード以上に胸かきむしられるような切なさを漂わせた、そういうメジャーコードが私は好きです。

*1:子どものころに見ていたのは、いわゆる“新ゼロ”。平成009も全話見た笑。コミックスも全巻持ってる。文庫でだけど

*2:といいつつ、仮面ライダーとかキカイダーは再放送で見てた。要は石ノ森章太郎が好きなのか