ザ・キョジャッキー

先月末にひいた風邪がこじれて鼻炎化して、咳と鼻水がいつまでも止まらんなあと思っていたら、今度はウイルス性胃腸炎で完膚なきまでに寝込みました_| ̄|○
あれはつらいよ…上からも下からも…_| ̄|○


そんなわけで数日寝込んでおったのですが、その間ベッドでうだうだしながら読んでいたのが、


アルカサルー王城 第13巻 (プリンセスコミックス)

アルカサルー王城 第13巻 (プリンセスコミックス)


アルカサルー王城ー外伝 1 (プリンセスコミックス)

アルカサルー王城ー外伝 1 (プリンセスコミックス)


修道士ファルコ (白泉社文庫)

修道士ファルコ (白泉社文庫)



これはもう本当に、文句ナシに面白い!! 声を大にして言うぞ。歴史モノ好きとか大河ドラマ&小説好きは言うに及ばず、歴史小説は好きだけどマンガはちょっと、という人にもぜひぜひ読んで欲しい。舞台が中世(1300年代後半)のスペインという、日本人にはあまり馴染みのない時代であり国であるので、ちょっととっつきにくさはあるかもしれませんが、順を追って丁寧に読んでいけばちゃんと理解できるし、青池保子は絵柄がどうも、という向きも、読んでるうちに気にならなくなってくる。
まず、主人公のドン・ペドロが非常に魅力的。史実の彼も実に波瀾万丈な人生を送った王様なんだけど、日本人にはほとんど知られてなかった人物なわけね。その大筋は史実に忠実でありつつ、さらに青池氏が膨らませたり削ったり。そのポイントがあまりにも的確かつ愛情にあふれているものだから、読んでるうちにもう、史実のドン・ペドロもこんなんだったに違いない、としか思えなくなってくる(笑)。もちろん、彼をとりまくキャラクターたちもそう。敵も味方も、本当に生き生きと描かれていて、人物造形に手抜きがない。ちょこちょこと史実と違ったり、つじつま合わない部分ももちろん出てはくるんですが、ここを変えたらその後の歴史が大幅に狂うぞ、というような要所要所は絶対に外さないので、不自然じゃないわけ。"時代"の大枠をがっと掴む力、そこから枝葉を広げる想像力、それらを大枠の中に落としこむ構成力。で、何よりも大事なのは、それらすべてを手抜きせずにやりとげる根気(笑)。どれが欠けても成り立たない。
この13巻が一応完結巻になるんですが、これ、掲載誌の休刊で13年(!)も未完のままだったんですね。私は連載中に、本誌ではなくてコミックスでずっと読んでて、であまりにも休止期間が長かったもんですからこれはもう未完のままで終わっちまうんだろうなーといつだったか見切りをつけてしまって、それまで持ってたコミックス売っちゃったんですわ。そのまま、ふとしたはずみに思い出したりして、気にはかけてたんですけど、以前みたいにマンガもそんなに読まなくなっちゃったし、そうこうしてるうちにもうほんとについ最近になって、2年前に荒ワザ使って(笑)完結させたらしい、ということを知り、それであわてて本屋に走った次第。なので、実はそんなにえらそうなことを言えた義理ではないのです(苦笑)。で、その荒ワザというのが、ちょうどドン・ペドロの絶頂期でタイミングよく休載期間に入ってたんですが、以降の凋落〜死に至るまでを、200Pに凝縮しまくって一気に描き上げてしまう、という。本来だったら、山を登り始めて頂上までに10巻かけたんだとしたら、そこから降りるまでも同じくらいの巻数かけてしかるべきところがいきなり200Pなので、まあそりゃあやっぱりねえ、本来あるべき姿で読みたかったなあ、というのが偽らざる本音ですよ。でも、はしょりにはしょった200Pでも、ドン・ペドロに感情移入してそれまでの物語を読んできた身からするとけっこう辛いモノがあったりしたので、これはこれで良かったのかなあ、という気も。でまた、このはしょり方が名人芸としか言いようのない上手さなので(笑)、こういう完結の仕方をとったことでそれまでの名作が損なわれたかといったらそんなことは決してないわけであります。いやーもうねえベアトリスのあれでねーわたしゃ目から汁がだらだらでしたがな(ネタバレ厳禁)。あのーまあとにかくなんだ、読んでない奴ぁ読め!! とそういうことです。なーに本屋行って13巻まで大人買いしてきて、週末2日間家に閉じこもってりゃいいだけのことよ。大人ならできる(笑)。でもって、やってみるだけの価値は十二分にありますですよ、ええ。


ちなみに『修道士ファルコ』は、アルカサルの今風に言うならスピンオフ作品です。微妙に重なってる。こちらは、同時代のドイツの修道院を舞台にした連作ものですが、歴史モノではなくいわば時代モノなので、もう少し気楽に読めるです。これがまた、花も実もある嘘、といった塩梅で、少女漫画的な虚の部分と14世紀ドイツの風俗などの実の部分の、さじ加減がまことに絶妙。「神よ 未熟者にお許しを」「で?」「うむ」 死ぬほど笑ったよ。