夜更けにふと思い出した1曲

何年も前に、1回だけ連れて行ってもらったカウンターだけのバーで、THE SMITHSの話で盛り上がって、でマスターがかけてくれた〝Slow Emotion Replay〟。

Dusk

Dusk


「いいねえTHE THE!」「このイントロのね、ジョニー・マーのハーモニカがね!」「「そうそう〝HAND IN GLOVE〟!!」」(ハモリ)なんてキャッキャとはしゃぐ私とマスターを尻目に、そのお店に連れてってくれた別部署の上司はストレートのジンをやったら煽り続け、その後ろのソファで、同僚のSちゃんは体を複雑に折り曲げて、すうすう寝息を立てていた。
上司のIさんは東京に異動が決まり、その日は彼の送別会で、けっこうな勢いで酔っ払って、二次会だか三次会だったかで、私と彼と、Sちゃんの3人だけで、そのお店に流れてきたわけだ。ロック・バーというわけではなかったけど、いきなりの私のTHE THEが聴きてえというリクエストにあっさり応えてくれる程度には、いろんなCDいっぱい流してくれるお店だった。


私たちの前ではとっても穏やかで、〝いい人〟だったIさんは、後ろのソファで眠っている同僚のSちゃんのことを、たぶん好きだったんだと思う。
綺麗で、可愛くて、姐御肌で仕事ができて、誰にでも優しい子だった。私も彼女が好きだったし、みんなに好かれている彼女のことを、ちょっとだけうらやんでいたりもした。
Sちゃんが、同じ職場の彼女の直属の上司と付き合ってて、そのうち結婚するんであろうことは、職場の公然の秘密だった。
明け方になって、まだ寝ぼけまなこのSちゃんをタクシーに押し込んで、私とIさんは天神まで歩いて、そこから別れてそれぞれ帰った。
それだけの話。



…ここで私が、実はIさんのことを好きだった、なんつったら、いい具合にドラマなんだけど、残念、それだけはない(笑)。オチがなくてすみません。



その確か翌年だかに、Sちゃんは別の人と結婚して(結婚式も行ったよ)、さらにその何年後かに私は今の会社に転職して、それからしばらくして、Iさんは体をこわして前の会社をやめたと、風のたよりに聞いた。今は、どうしてるんだろうな。



あのお店、いつかもう1度行ってみようと思いつつ、いまだに果たせずにいる。