thee michelle gun elephant/cult grass stars

cult grass stars

cult grass stars

最初にこのアルバムを聴いたのは、たしかアウト・ブルーズのシングルが出たころだったかしら。それはつまり当然のごとく後追いということで、でやっぱりそーいう感じを期待するじゃないですか、チキゾンとかギヤとか、あのへんのアルバムっぽい感じを。そしたら見事に裏切られて(笑)、結局〝世界の終わり〟ばっかりあほみたくリピートして(この曲だけは、なんでかしらんが90年代初頭のブリット・ポップのにおいがするのですよ)お茶を濁す、みたいな。そんなわけで、ずいぶん長い間忘却の棚の上に放り込んでたアルバムだったのですが、今あらためて聴くととんでもなくかっこいいな、コレ。いやあ遅まきながらも、このカッコよさを理解できるようになってよかった(笑)。
イギリスの、パンクやモッズやガレージやパブロックなんかを、日本的に咀嚼したアルバム。なんてもーさんざっぱら言い尽くされてて今さらなのですが、そういう音ってそれまでもちろんまったくなかったわけじゃないけど、結局一部の好事家のもの、で終わっちゃってたわけで、このアルバムは、そういうマニアックな部分と、とっつきやすいコマーシャルな部分が、ぎりぎりのところでせめぎ合っとるとです。まだいくぶんマニアック寄り、ではあるけれど。次の『High Time』になると、そのへんのバランスがちょうどいいところ、ほんのすこしコマーシャル寄りに振れてるあたりも含めてちょうどいいところに収まってて、それはたぶん〝キャンディ・ハウス〟があるからだと思うのですが。
イギリスなんだけど、UKというより〝ブリティッシュ〟とあえて呼びたくなるサウンド(笑)。クラシカルな感じ、若干のいなたさと野暮ったさ。そういうのが、このアルバムだとまだかなり残ってるのですね。スタイリッシュではあるんだけど、咀嚼しきれてない丸のカタマリ、みがかれてない、いまいちスマートでない。昔はむしろ、それが苦手だったのですが、今はむしろ好き。あと、このアルバムの詞はどれもほんとに大好きです。チバがかつて、「俺はモリッシーになりたかったんです」とか言ってるのを、どこがよなんて思ってたのですが、しげしげと歌詞カード眺めながら聴いてみて、ようやくぽんと膝を打ってしまうほどに腑に落ちた(笑)。なんともいいがたくズレた、ゆがんだ感じ、狂気というほど大仰じゃないけど、それゆえ誰もが当たり前のように見過ごしているちょっとした〝くるい〟、を、すごく丁寧にすくい上げている。〝toy〟はヤバいね! ネオアコみたいな曲なんだけどちょっと暗めの、それにあのチバの声(まだ若いのでそんなに嗄れてない)であの詞を歌われた日にはアナタ。〝I was walkin' & sleepin'〟なんかもかなりぐっさり刺さる。なんていうのかなあ、紙をふたつ折りにしたら端っこがちょっとズレたのが気持ち悪くて仕方ない、とか部屋のすみのゴミ箱が、いつもより3cm横に傾いてるのが許せない、とか(笑)、そういう割とどうでもいいことに気をやってしまう、少々強迫神経症めいた空気が、このアルバムの歌詞にはあるような気がします。


にしてもしみじみと思うのですが、この頃の彼らのヴィジュアルはほんっとーにいいなあ…もう、かっこよくって可愛くって、ヨダレがだらだらです(えええー)。ミッシェルの、男!漢!アニキ!(笑)なイメージって、ギヤあたりからわりと自分たちで意識して作ったもので(スーツを黒一色にするとか、バイカースタイル取り入れるとか)、それまでのヴィジュアルとかたたずまいってのは、明らかに女子が反応する類のものだと思うんですよね。だってもう、かっこいいより先に、可愛いんだもん(笑)あの鬼神社アベですら!!(大笑)*160年代のブリティッシュ・ビート・バンドの写真とか見ると、プレーンな白シャツに、ニットにジャケットにジーンズだったり、細身の丈の短めのパンツだったりで、およそ今の感覚でいえばいわゆる〝ロック〟なヴィジュアルとはほど遠い、スクエアなファッションで楽器抱えてたりするじゃないですか。私はああいうのがものすごーく好きなのですが、そういう感じがするのですねチキゾンくらいまでのミッシェルさんは。

*1:〝キャンディ・ハウス〟シングル中ジャケのアベの横顔写真、アベでひっくり返ったのなんて悪いが後にも先にもあれだけだ笑。なんじゃこの美青年!?と。