というわけで

dipの音源を、自分内時系列に沿って(要は入手順)ぼちぼちと覚え書いていくシリーズ。はっ今唐突に思い出したが、そういやウィラードでも似たようなことやってたけど『TALYHOO』だけ書くの忘れてた。


Fun Machine

Fun Machine


ゆるやかにそろそろと、音が滑り出す。はじめは輪郭のぼやけていた、とろけるような音像が、しだいにくっきりとカタチを持ち始め、熱を帯びてきて――突然、パチンとその熱がはじける。それを合図に、怒涛のようにあふれ出すギターの奔流。1曲目、“slower”。あ、これは私すごく好きかもと一瞬顔がほころんだ、そのことをいやにはっきり覚えている。続く“it's late”〜“it's too late”の流れでそれが確信にかわった。というか、鼻血噴いた(えー)。鋭いギター、メロディアスなベース、どっかんどっかんなドラムが、熱を溜めつつうねうねと絡まりあいながら、どこまでもどこまでも伸びていく。ああこれどこまでいっちゃうんだろう、と息を詰めてその音の行方を見守ってると、唐突にストンと落っこちた先に、とてつもなくキャッチーな、“it's too late”のイントロのリフ。…かっこいい。うわあうわあ何これかっこいい! やられた! 鳥肌立った! ゴロゴロゴロゴロ!(←どうやら床を転がりまわっているらしい)

ひとつのフレーズを執拗にループさせつつ声と楽器が絡み合いつつ進んでいく、いわゆるミニマルミュージックがベース。にありつつ、全体の音像が、なにやらえらく艶っぽい。なまめかしい。ぶっちゃけ、エロい(笑)。ストロークスの1stのジャケットを思い出した。エロスなんだけど、どっか無機的でプラスティック。濡れ濡れのびしょびしょじゃなくって、つるんとなめらかで乾いている。うわあすげえなあこれほんとに日本人がつくってんのか、とまずはびびった。いわゆる“J-POP”くささがぜんぜんなくって。細かくほじくりかえせば、ああこれってアレじゃん、みたいに元ネタにニヤリとできるところもあるんだろうけど、アルバムを通して聴くと、“なになに風”とはちょっと言い難い。漠然とした、とらえどころのないイメージ。
細部まで気をつかって、丁寧にアンサンブルを組み立てているのですが、それが神経質になりすぎず。ちょっとゆるさを残した、ほわんとした空気が全編流れているので、すんなり耳に入ってきます。サイケだったりカオティックだったりな曲も、どこかしら明るい。で、ところどころけだるい。休日の午前中、2度寝しながら聴くと最高にハマる(笑)。曲のサイズも、dipにしては(笑)コンパクト。ただ、日本語詞少ないわ10曲中4曲インストだわなので、そういう意味ではちょっととっつきづらさはあるのかも。あ、あとこれは完全に蛇足ですが、ジャケットがどうもアレだ。購買意欲がそそられない(失笑)。



“it's too late”のPV。お気に入りなので貼っておく(笑)。


…とまあそんな感じで、ひゃっほうこれ大当たりじゃん!と小躍りしたのが確かこのあたり。久しぶりにレンタルの会員証作って、嬉しがってあれこれ借りてきた中の1枚だったわけです。もちろん、興味があったから借りてきたんですけど、正直そこまで期待はしてなくて(失笑)。確か一緒に借りたものの中で、1番最後に聴いたんだよなー。そんなこんなで以下次号。