dipの音源を、自分内時系列に沿ってぼちぼちと覚え書いていくシリーズ@その2

前回からの続き。
で、すっかり『fun machine』が気に入ってしまったアテクシ。他のアルバムも聴いてみたいなーとディスコグラフィを検索してみたところ、どうも既発アルバムの半分くらいは廃盤らしい。しょうがない中古屋で気長に探すか、まあ10年くらい前のアルバムなら某Wさんたちの時ほど大変な目にはあわんじゃろ、と高をくくりつつ行きつけの某店を訪ね、そして何気なーく邦楽コーナーの「た」行を眺めてたら――あったよ。ふおおお何これ! シングル? ミニアルバム? いつ出たやつだ? over 30 minutesってなってるけど2曲しか入ってなくね? よくわかんないけどまあいいや、これも何かの縁ってもんだろ買っとけ! みたいな感じで、まあ割とね、軽い気持ちで捕獲してみたわけです。


waiting for the light

waiting for the light


完 全 に や ら れ ま し た


びっくりした。ほんっと、びっくりした! あまりにも予想の範疇を超える出来事に遭遇すると、人は驚くのを通り越して笑っちゃうもんなのです。笑っちゃいました、ステレオアンプの前で転がりまわりながら。だって、『fun machine』と全然違う。ぜんぜんちがうんだよほんっとに!!(超力説) 『fun machine』が2004年で、このシングルは1994年。この10年の間に、一体何があったんだ。ひょっとしてワタシものすごくすっ飛ばしすぎた? たとえばネオアコがいきなりシンセバキバキのトランスミュージックになってたとか、そういう極端な変化ではなく、ギターを中心とした3ピースのロックバンドっちゅうフォーマット自体には全く変化はないのですが、しかしそのフォーマットの中で、とても同じバンドとは思えないくらいに変化している。
誤解を恐れずに言えば、この“waiting for the light”という曲は、非常にナチュラルに“J-POP”しているのです。歌メロがはっきりしていて、わかりやすくて、日本語の詞で。って、それだけでJ-POPというカテゴリにくくっちゃうのはあまりにも乱暴ですが(笑)、要はカラオケで歌っても違和感のない感じ。90年代の前半〜中盤にかけては、それこそここに集いしわがスレイヴたちよまっさかりだった私ですが(失笑)、それでもカラオケで歌うために篠原涼子とか覚えたりしてたですよ、いとーしーさとーせーつーなーさとーこーこーろづーよーさとー♪(何故歌う) そういう空気を、何故だかとてつもなく思い出した。「イギリスやニューヨークのアンダーグラウンドシーンに影響を受けた、3ピースのギターロック」というフォーマットから踏み外すことなくして、当時の“カラオケ的”J-POPを咀嚼している、といったらおおげさかしら。おおげさだわね。いや、そんなうさんくさい言説はこの際どうでもいいのですが、これ、ものすごく良い曲です。本当にポップ。A→B→サビ、ですらなくひとつのフレーズを少しずつ変化させつつ循環させただけという恐ろしく単純な構成なのですが、このメインのフレーズがもう、泣けるくらいによいメロディ。力強い後ろ向きっぷりが全開の歌詞がまたいいんだわ。ロックバンドに潔癖な文学性を求めがちな、思春期まっさかりの暗黒少年少女たちが、「君の好きなすべてのものと世界は回ればいい」だの、「誰も壊せない夢の中2人でいられればいい 深く沈む夢の中2人だけで眠り続けたい」だのと、あんなに確信込めたメロディに乗っけて堂々と歌われちゃったら、一発でコロっといくよなあ(苦笑)。
『fun machine』は、ある意味私がそれまで思い描いていた“dip”のイメージから、そんなに外れてはいなかったのですね。すっごくかっこいいけど、ヘンな話玄人向けっちゅうか。マスに向かう音じゃない、どこかアンダーグラウンドなにおい。そこへいきなり、ガツンとカウンターパンチを食らった曲が、この“waiting〜”なわけです。完全にイメージ裏切られて、え、この人たちって結局どういうバンドなわけ? とスピーカーの前で口ポカンでした(失笑)。そういやねえ、ウィラードの時もまさにこんな感じでねえ…『GOOD EVENING WONDERFUL FIEND』にハマリにハマって、他の音源なんかないのかしらとYouTubeを漁ってたら、夜のヒットスタジオに唯一出演した時の映像が見つかって、それで完全に持ってかれちゃったんだよね…イメージ通りの「動くJUN氏」と、イメージ裏切りまくりのどポップな“RUN‘CINDY’RUN”にね…ヤバいわこれ、どツボにハマりこみ方がまるっきり一緒じゃないか(遠い目)。予想通り、だんだん思い込み激しすぎのキモい流れになってきましたので、慌ててぶったぎって以下次号。


PS:カップリング収録のビートルズ“DEAR PRUDENCE”のカヴァーは、こちらはわりかしイメージどおりというか(笑)原曲よりいっそうサイケデリック色を強めた演奏を、さらにズタズタに切り刻んでつなぎ合わせた激烈長尺ナンバー(約25分)になってて、こいつがまた非常によく眠れます。というか、私の場合ものの3分程度で毎度毎度意識を失うので、最後までまともに聴けたためしがないという。駄目じゃん。